皮膚外科のための 高周波ラジオ波メス 手技の教科書

皮膚外科のための 高周波ラジオ波メス 手技の教科書

監修:中川 浩一先生(大阪府済生会 富田林病院 皮膚科 部長)
   高見 昌司先生(関西電力病院 形成再建外科 部長)
 

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CONTENTS

  • 痛みのない麻酔・きれいな傷にする縫合
  • エンパイアニードル(エンパイアニードル電極による皮膚切開のポイント)
  • エンパイアニードル(エンパイアニードル電極による混合切開および止血のポイント)
  • ループ電極(隆起した黒子)
  • ループ電極(扁平な黒子)
  • https://www.ellman.co.jp/wp-admin/themes.phpボール電極(脂漏性角化症)
  • マイクロ絶縁針電極(毛細血管拡張症)
  • 爪床用絶縁電極(陥入爪の治療)
  • スタン式モノポーラ・フォーセップ(スタン式モノポーラ・フォーセップ使用方法のポイント)
  • 【症例】褥瘡治療
  • 【症例】熱傷治療における植皮術、皮膚潰瘍治療における遊離皮弁移植術、刺青の切除
  • 【症例】眼瞼黄色腫、下眼瞼縁良性腫瘍、内反症(右下眼瞼内反症+両上眼瞼皮膚弛緩)、若年層の下眼瞼内反症に対する眼瞼筋凝固法、重瞼術埋没法、涙嚢鼻腔吻合術鼻外法、涙嚢鼻腔吻合術鼻内法
  • 【症例】眼瞼下垂、フェイスリフト
 

「皮膚外科のための高周波メス手技の教科書」を監修して

今回は、日常診療で比較的頻度の高い疾患に対する、ラジオ波手術の具体的手技について1冊にまとめてみました。
皮膚科や形成外科、一般外科において、ホクロの除去を希望されて来院される患者さんは後をたちません。これらのうち、7̃8mm 以下のものについては、従来の、金属メスによる切除に比較してラジオ波手術は極めて簡便で、跡形もほとんどなく仕上がります。もちろん、誰もが何の知識も持たずにできるわけではなく、今回の教科書では、基本的テクニックを懇切丁寧に解説したつもりです。また、脂漏性角化症は一種の老化現象ですが、美容外科への期待が大きい現在において、除去のニーズは高まる一方です。これも、いわゆる船形切除よりも、ボール電極を用いたラジオ波焼灼術の方が、患者さんの負担が小さくてすみます。
高見先生の分かりやすい説明で、先生方の明日からの診療にすぐに役立つはずです。

中川 浩一先生
中川 浩一先生 1981年 大阪市立大学医学部卒業
同年、大阪市立大学医学部臨床研修医となる
研究医、大阪市立大学助手、講師を経て
2005年 恩賜財団大阪府済生会富田林病院 皮膚科部長


これまでにもRadiosurgery 研究会セミナーなどにおいてラジオ波手術の具体的手技を紹介してまいりましたが、今回それらの手技の中から、特に、臨床医の先生方が明日からでも実践していただける基本的なものをまとめてみました。
選んだ項目は、皮膚外科領域から、隆起した黒子、扁平な黒子、脂漏性角化症、毛細血管拡張症の治療についてです。
それぞれの手技について、疾患の解説、準備する器具、材料から、薬剤など詳細な解説を行い、研究会セミナーに参加された先生には確認用として、参加できなかった先生には診療の一助となるテキストとして御利用いただけると幸いです。

高見 昌司先生
高見 昌司先生 1989年 香川医科大学卒業、京都大学形成外科学教室入局
2004年 関西電力病院形成再建外科部長
 

痛みのない麻酔・きれいな傷にする縫合

麻酔のポイント

外来小手術では、ほとんどの場合、出血を抑え、麻酔の持続時間を長くするため、麻酔剤に血管収縮剤(エピネフリン)を入りを用います。しかし、血管内に流入すると、急激な血圧上昇や頻脈を招くため注意が必要です。

痛くない麻酔注射のポイント
  1. 部位によるが、できるだけ細いシリンジを使うこと(例:ツベルクリン用の注射器)。少しずつ注入することができるため。
  2. できるだけ細く短い針を用いること(27G、30G など。現在では33G という細い針もある)。
  3. できるだけ、垂直に刺入する。痛点に当たる面積を小さくするため。
  4. 注射針の刺入速度をゆっくりとする、太い神経に針を当てないようにする。
  5. 注射液の注入速度が速いと痛みが強いので、できる限りゆっくりと注入すること。そうすると、痛みも少なくなり、また全体的に麻酔の量も少なくてすむ。
 
このゆっくりと注入する際、持ち方一つで容易にできる方法があります。
押子(プランジャ)を親指で押すのではなく、シリンジを中指と薬指で固定し、押子(プランジャ)を人差し指と親指で摘んで押し込みます。(写真参照)
そうすることにより、ゆっくりと注入することができます。



注射針の使い方のポイント
注射針を予め曲げて使うと非常に便利である。針の根本で30 ~ 45 度くらい曲げておくと、皮膚と平行に同じ深さで麻酔範囲を広げることが出来ます。
 

縫合のポイント

真皮縫合とは、創縁を寄せるために真皮層レベルで縫合する方法です。この真皮縫合によって、表皮創縁が密着するほど寄せられることが理想です。

使用する糸と針について
埋没縫合に使う糸は、4-0、5-0、6-0 の角針付き糸を用いる。
素材はナイロンもしくは、ポリプロピレンのモノフィラメント縫合糸または、モノフィラメント吸収糸(例:PDSII®、マクソン®)
表皮縫合に使う糸は、顔の場合、7-0。体幹肢の場合、5-0、6-0 の針付き糸を用いる。基本的に角針を使うが、顔では丸針を用いることもあります。

ポイントは、創縁部の割面を鋭角にして皮下をトリミングすることと、糸のかけ方にあります。



真皮の部分を針が通るとき、突き抜けないように注意すること。また、反対側に針を通すとき同じ深さのところから刺入していきます。



糸を締めると、緊張して真円になっていきます。最も浅い部分が引き寄せされて創縁部分が盛り上がります。そして、結び目が下に来ます。



盛り上がることにより、皮膚のマージンの血流が阻害されずに密着します。結果、1次治癒し、縫合不全が起こりにくい


Point:埋没縫合の糸切りをするときに、糸の断端を残さず結紮部分だけになるようにする。糸の断端が刺激になって、縫合糸腫瘍を起こしやすくなります。
最後の皮膚縫合時には、きつく締めないこと。血流が阻害されるためである。軽く締める場合、皮膚を引っ張っても縫合部が開かない程度に締めることがポイントである。



 

エンパイアニードル電極による皮膚切開のポイント

皮膚切開のポイント

皮膚切開に、なぜあえてエンパイアニードル電極を使うのか?
金属メスでの切開の場合、組織を「上から押す力」と「横に引く力」の2つの力が必要である。そのため、曲線や、組織の硬い部分から柔らかい部分にまたがって切る場合、操作が難しくなる。また、眼瞼など柔らかい組織を正確にデザインしたカーブの通りに切るのは苦手である。
一方、エンパイアニードル電極と高周波ラジオ波メスとの組み合わせで皮膚切開を行う場合は、接触するだけで切開が出来るため、デザイン通りに線を描くだけで切開が容易に行える。ただし、エンパイアニードル電極と金属メスは、切れ方がまったく違うため、器械の特性とその切れ味を十分に理解した上で用いる必要がある。

【切開の手順】
エンパイアニードル電極の先端形状は、円錐型になっており、その先端で切開をおこないます。
手順としては以下の通りです。
①切開予定線を書きます。
②切開予定線に対し、指などで垂直にテンションをかけます。

③通電を始めてから、エンパイアニードル電極を組織面に対し、出来るだけ垂直に、かつ、先端だけを組織にあてて、一定の深さを保ちながら切開を行います。
注:先端を組織に接触させてから通電を始めると、切開しないで蓄熱するだけになります。必ず、通電を始めてから切開を始めて下さい。
④一度に切開する長さはテンションが掛かっている部分に限定します。切開の深さは、真皮層までの深さに留めておくと、出血はほとんどしません。このとき、切開は深くなると、出血してしまいます。

【皮膚切開の練習方法】
切開の際、最も重要なことは、「一定の深さと速度で切開を行う」ことです。
その練習方法は、筆を使用し、一定の太さで線を書く練習です。
接触する瞬間に、動きを止めないこと。
切り始めの蓄熱による熱損傷を防ぐためです。
一定の太さで書く。
すなわち、切開の深さと速度が一定である。
これにより、熱損傷の少ない滑らかな切開線が得られます。
習字における「払い」を書く。
滑らかに力を抜いていくことにより、切り終わりの蓄熱による熱損傷を防ぐことが出来ます。


【皮膚切開時の出力設定】
機 種
モード
出 力
サージトロン Dual
CUT
10~14
サージトロン S5
CUT
8~12
注:この出力設定は目安です。状況により先生方のご判断で出力設定を変更して下さい。


発行元

日本RF手術研究会
 
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